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組織全体で育む「接遇」とは?チーム医療を支える実践的コミュニケーション術

目次

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【監修】
有限会社 Effort 代表取締役 木林瑞穂(きばやし みずほ)氏   

【略歴】
日本メンタルヘルス協会認定心理カウンセラー
名古屋にて企業研修の経験を積み、平成15年3月有限会社 Effortを設立。
約30年間中小企業のコンサルティングを行う中で、個人個人の悩みを解決することの重要性を感じ、心理学を学ぶ。
あらゆる悩みや問題を解決に導くカウンセラーとして多くのクライアントから支持を受け、現在は社員教育・カウンセリングに重点を置いている。

 

 なぜ医療現場で「接遇」が重要なのか 

医療現場では、日々患者さんに確かな医療を提供することが何よりも求められますが、それと同時に、スタッフの人手不足やメンタルの維持、コミュニケーション不足といった数えきれないほどの課題が山積みになっています。チームとして良好な信頼関係を築き、患者さんに「この病院なら安心できる」と思っていただき満足度を向上させるためには、高度な医療技術だけでなく、相手を思いやる「接遇」と「マナー」が必要不可欠です。

本コラムでは、医療安全に直結する接遇の基本から、円滑なチーム医療を実現するコミュニケーション術まで、現場ですぐに役立つポイントを分かりやすく解説します。新入職員の方だけでなく、日々現場の最前線で活躍する先輩職員や管理者層の皆様にとっても、忙しさの中でつい疎かになりがちな「基本を思い出す一助」として、ぜひご活用ください。

 医療事故を防ぐ「接遇5原則」と「医療安全5S」 

医療事故の発生要因を分析すると、全体の約半数(47.2%)は「確認、観察、報告を怠った」「判断を誤った」「連携ができていなかった」といった当事者の行動に関わる要因であることがわかっています。さらに「知識や技術の不足」や「多忙」といったヒューマンファクター(19.3%)を合わせると、事故要因の多くが「人」に関わるものです。実は、これらは「接遇・マナー」に対する意識を高め、コミュニケーション力を向上させることで十分に対処が可能なのです。

接遇の基本となる「接遇5原則」は、身だしなみ・あいさつ・表情・態度・言葉遣いの5つです。たとえ自分に悪気がなくても、これらの原則が守られていなければ、相手に不快感を与え、コミュニケーションを拒絶されてしまうこともあります。

また、医療現場の安全を守るための基本として「医療安全5S」があります。これは、整理(不要なものを捨てる)・整頓(配置場所を決める)・清掃(点検する)・清潔(維持する)・習慣化(これらを定着させる)の徹底です。これらを日々の業務の中で習慣づけることが、「この病院なら安心して治療を受けられる」という患者さんからの絶対的な安心感と信頼感に直結するのです。

 

円滑なチーム医療を実現するコミュニケーションと第一印象

チーム医療を円滑に進め、より良い人間関係を築くためには、自分も相手も大切にする自己表現である「アサーション」というコミュニケーションスキルが有効です。

医療現場でよくあるNGなコミュニケーションとして、上から目線で高圧的に命令や指示をする「攻撃的(アグレッシブ)」な態度や、逆に萎縮してしまって我慢を重ね、必要な意見が言えずに突然感情が爆発してしまう「非主張的(ノンアサーティブ)」な態度が挙げられます。目指すべきは、相手を尊重しながらも自分の意見をしっかり伝える「アサーティブ(主張的)」な姿勢です。自分の思いを確かめ、「以心伝心」に頼らず事実や状況をきちんと言葉で共有し、その上で具体的な提案を行うことがアサーティブに伝えるポイントです。

また、コミュニケーションの根底には「見返りを求めないホスピタリティ(おもてなしの心)」が必要です。損得勘定で動かず、相手のために心から尽くす姿勢が、チームや患者さんとの良好な関係を育みます。

そして、対人関係において忘れてはならないのが第一印象です。第一印象はわずか6秒で決まり、その短い時間の中で相手の判断に大きな影響を与えるのは、「視覚情報(見た目・表情)」や「聴覚情報(声・話し方)」などの非言語情報です。つまり、座り方や歩き方を含めたトータルの身だしなみや清潔感が非常に重要になります。
さらに、現在の医療現場ではマスクの着用が欠かせません。マスクをしていると表情が伝わりにくく、無愛想に見えがちです。マスク着用時は「口角を上げて目で笑う」ことを強く意識し、声のトーンをワントーン上げて明るく話すことで、患者さんに安心感を与えることができます。

顔が見えない電話応対も、医療機関の第一印象を決める重要な要素です。3コール以内に出る、明るい第一声で名乗る、利き手でメモを取りながら聞く(5W3H「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように・どのくらい・いくらで」を意識する)、日時や数字を復唱して確認するといった基本ルールを徹底しましょう。

「セルフブランディング」で患者さんに選ばれる医療人へ

社会人として「デキる職員」になるためには、「自分がやりたい仕事」にこだわるのではなく、「相手がしてほしい事」にフォーカスして行動する必要があります。相手の期待値を把握し、それを少しだけ超える行動をとることが「付加価値」を生み、大きな貢献に繋がります。この積み重ねが、「〇〇さんだから頼みたい」と患者さんや同僚に選ばれる個人の「セルフブランディング」となっていくのです。

そのためには、新入職員であっても自ら「責任」を取る行動が求められます。その第一歩が、上司や先輩への「報・連・相(報告・連絡・相談)」によるリスクの共有です。いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どのように(5W1H)を意識して、論理的に伝える習慣をつけましょう。また、業務上の課題解決には「STAR(状況:Situation、課題:Task、行動:Action、結果:Result)」というフレームワークを活用し、自ら状況を分析して工夫する力を養うことが有効です。

さらに、人間的な成長に欠かせないのが「感謝の心」です。感謝には3つのレベルがあります。レベル1は「何かをしてもらったときに『ありがとう』と思える心」、レベル2は「あって当然と思っていることに感謝できる心」、そして最も高度なレベル3は「自分に降りかかる困難や災難、課題にさえ感謝できる心」です。失敗や困難を他人のせいにせず、自らの成長の糧として感謝できる医療人を目指しましょう。

 医療現場全体で育む「接遇」と「信頼」 

医療現場において、「接遇」と「信頼」は一部のスタッフだけが意識するものではなく、チーム全体で育んでいくものです。
人の心には「自己承認」と「他者承認」という2つのコップがあります。人はまず「存在そのもの(be)」が承認され、自己承認のコップが満たされてはじめて、他者のために行動できるようになります。これは、新入職員から管理者層まで共通して言えることです。互いに積極的な声かけや「存在承認」を行い、仲間のコップを満たし合う温かい職場環境をつくることが、患者さんへの「見返りを求めないホスピタリティ」を生み出す土台となります。互いに支え合いながら自分らしさを発揮していくことこそが、患者さんから末永く選ばれ、「あなただから頼みたい」と言っていただける立派な医療人、そして信頼される病院づくりへと繋がっていくはずです。

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