課題
- 約1,000品目の医薬品の価格交渉や見積もり比較に多くの時間と労力がかかっていた
- 医薬品の購入価格が市場全体から見て適正なのか、客観的に判断することが難しかった
- 新規採用薬や緊急で必要になった医薬品について価格や供給可否を確認する手間があった
- 医薬品卸から取得した価格情報の管理や購入先の選定が担当者の経験や判断に依存していた
- 価格交渉やデータ管理に時間を取られ、調剤や患者対応など本来の医療業務が圧迫されていた
解決策
- 医薬品共同購買(GPO)を導入し、医薬品卸各社との個別の価格交渉を総合メディカルに委ねた
- 過去の購入実績を基に導入前のシミュレーションを行い、GPOの効果を確認してから採用した
- 「SMart-Web」を活用し、卸各社の価格や購入先の候補を画面上で比較・確認するようにした
- 医薬品の価格情報や経過措置医薬品などの情報を「SMart-Web」で確認し、属人化を防いだ
- 購買に伴う価格交渉や情報整理を効率化し、外部に委ねられる業務を見直すことにした
効果
- 医薬品卸各社との個別交渉が不要になり、交渉時間と購買業務にかかる労力を削減できた
- 複数の購入条件を比較できるようになり、全体として適正な条件で購入できるようになった
- 医薬品が急きょ必要になった場合でも、各社の価格を比較し、購入候補を迅速に判断できるようになった
- 購入先の選定や採用品目の確認をシステム上で行うようになり、手間や手戻りを軽減できた
- 価格交渉やデータ管理に費やしていた時間を削減し、本来の医療業務に向き合える環境を整えられた
今回のインタービュイー
社会医療法人水和会 水島中央病院
事務統括部長・副院長 馬生 康宏 様
薬剤部長 出石 英治 様
薬局長 藤原 啓一 様
地域の救急医療を支え、時代の要請に応えて進化を続ける中核病院

―はじめに「水島中央病院」がどのような病院か教えてください。
馬生様(以下、馬生):
水島中央病院は、昭和36(1961)年6月に当法人の初代理事長の藤原とこの地域で当時診療所を運営していた3人の医師が入院治療させられる病床が必要と考え、それぞれに出資し病院を開設したことから始まりました。地域に必要な医療を地域の中で支えるという考えがその根底にありました。
その後は、水島地域の発展と医療需要の増加に合わせて歴史を重ね、2000年には現在の本館を建築すると同時にリハビリテーション医療を担う倉敷リハビリテーション病院を倉敷市内に開設し、法人内で機能を分担する体制を整えました。そして2014年に現在のA棟を増築、2025年にB棟を増築し、さらに地域医療を担うため体制構築を行いました。また、水島地域は以前より工業地帯として発展してきたこともあり、交通外傷や労働災害など救急医療への対応が長く求められており、当院も救急患者さんを積極的に受け入れながら地域の医療機関とも連携し、信頼される病院として地域医療に貢献しております。
現在の許可病床数は198床です。幅広い診療科による急性期医療に加え、回復期機能(増築した地域包括ケア病棟及び回復期リハビリテーション病棟)や在宅機能を兼ね備え、早期の退院支援や在宅復帰までを一つの病院の中で切れ目なく支援できるのが特徴です。これからも救急・急性期医療から回復期、在宅復帰支援まで、地域の暮らしを支える病院であり続けたいと考えています。
価格交渉を重ねても見えなかった、購入価格の妥当性
――「医薬品共同購買(GPO)」を導入される前、どのような課題がありましたか?
出石様(以下、出石):
GPOを導入する以前に私たちが抱えていたのは、はっきりとした課題というよりも、日々の業務の中で少しずつ蓄積していた違和感や改善の必要性でした。当時、当院では5社の医薬品卸と取引し、それぞれと価格交渉を行っていました。約1,000品目の医薬品を取り扱い、データ管理も薬剤部が担っていました。正直なところ、直接交渉する他に選択肢がなく、それが当たり前だと思い込んでいたため、あえて課題として意識していませんでした。
とはいえ、薬価改定のたびに見積もりを取り、購入先を見直す必要があります。以前は2年に1回でしたが、毎年改定されるようになると、交渉を終えたと思った頃には、また次の対応が始まるような状況で、現場の大きな負担になっていました。
難しかったのは、当院が購入している価格が市場全体から見て適正なのか分からないことでした。医薬品の購入価格は、ほかの病院に尋ねても教えてもらえるものではありません。一つの病院と一つの医薬品卸との間で交渉しているだけでは、自分たちの取引内容や薬価が適正なのか、客観的に確認できませんでした。

薬剤部長 出石 英治 様
一般的に購入量が多い大規模病院ほど、価格交渉では有利になると考えられます。一方、当院のような規模の病院では、使用する医薬品の種類や数量に限りがあります。限られた購入量の中で交渉しても、良い条件を引き出すのは難しいと感じていました。
以前は、交渉に力を入れれば薬価差益を確保できる余地がありました。しかし、医薬品を取り巻く環境が変わり、医薬品卸の利益幅も小さくなる中で、時間をかけて交渉しても、以前ほど成果には繋がらなくなっていました。「成果が見えにくい業務に、どこまで時間をかけるべきなのか」というジレンマから、次第にモヤモヤとした想いを募らせていたのです。
――それまで購入先の選定やデータ管理はどのようにされていたのでしょうか?
出石:
購入先の選定は大きな負担でした。以前は、メーカーごとに購入する医薬品卸をおおむね決めていましたが、新たな医薬品を採用するときや、急に必要な医薬品が発生したときには、複数社から見積もりを取り、条件を比較しなければなりません。緊急性が高い場合には、先に医薬品を確保して、後から価格を交渉することもありました。
データ管理についても、各医薬品卸から受け取った情報を表計算ソフトに入力し、値引き率などを計算して購入先を振り分けていました。しかし、約1,000品目ある医薬品を一品ずつ継続的に管理するのは、現実的にはかなり困難な作業です。担当者個人の経験や判断に委ねられる部分も多く、属人的な業務になっていました。

同一法人の倉敷リハビリテーション病院は、基本的に水島中央病院の採用品目に合わせてもらっていました。ただ、各病院の診療形態の違いから、医薬品採用に関しては剤形などに異なるニーズがあり、別のメーカーを選ぶ場合もありました。双方で個別に交渉した結果、同じ成分の医薬品でありながら、異なるメーカーの製品を購入していたこともありました。
薬剤師は本来、患者さんのために医薬品を安全かつ適切に使用することが役割です。価格交渉や見積もりの整理も病院経営上は必要ですが、それに多くの時間を取られることで、調剤や病棟業務、患者対応に充てる時間が圧迫されます。医薬品の購入環境が厳しくなる中で、購買業務の進め方そのものを改善したいと感じるようになっていました。
事前のシミュレーションと導入リスクの低さが、最初の一歩を後押し
――どのような経緯で総合メディカルのGPOサービスを検討されたのでしょうか?
出石:
総合メディカルとは、以前から病院内のレンタル事業などで取引があり、あるとき、GPOを紹介してもらいました。ちょうど薬価改定が毎年行われる方向へ変わり、医薬品卸との交渉が以前にも増して難しくなっていた時期でした。
総合メディカルからは、当院の過去の購入実績と当時の購入価格を基に、GPOを利用した場合のシミュレーションを提示してもらいました。価格面は、正直、大きな差が出るというより、おおむね想定の範囲内だったと記憶しています。当院は以前から医薬品卸との関係が深く、同規模の病院と比較すれば、ある程度良い条件で購入できていたからだと思います。それでも、GPOを利用すれば、全体として価格条件を平準化できるメリットがあると感じられました。何より大きかったのは、個別交渉を委ねられるため、価格交渉やデータ整理にかかる膨大な手間を削減できる点に、十分な価値があると判断できたことです。
また、導入して期待した効果が得られなければ、従来の方法に戻すことも可能だと説明を受けていました。まず利用してみて、自院に適しているかを確かめられるという点も、導入を判断しやすくした理由の一つでした。
価格比較から緊急購入までが迅速になり、購買業務の負担が減少
事務統括部長・副院長 馬生 康宏 様――GPOサービスを導入された後、どのような効果を感じられましたか?
藤原様(以下、藤原):
実際にGPOを利用して、最も実感しているのは業務負担の軽減です。以前のように、医薬品卸各社と個別に価格交渉をする必要がなくなりました。価格を決めるまでの時間が短縮され、購買業務に費やす労力も確実に減っています。
とくに便利なのが、「SMart-Web※」で医薬品卸各社の価格を比較できることです。以前はメーカー単位で購入先を決めていたことも多く、薬剤個々の価格が本当に適正なのか判断しにくい状況でした。現在は、取り扱いのある医薬品卸の条件を画面上で確認し、その中から購入先を選べます。
※「SMart-Web」とは 品目を検索するだけで取引卸の価格確認が可能で、価格が存在しない場合は見積依頼もできるWebシステム(利用料無料/インターネットの繋がるPCで利用可能)
当院は救急医療を担っているため、医薬品を急きょ調達しなければならない場面があります。救急で使用する医薬品に加え、入院患者さんの持参薬と同じ医薬品を院内で採用していない場合もあります。代替が難しく、治療上継続が必要な医薬品については、速やかに調達先を確保する必要があります。
以前は複数の医薬品卸へ個別に問い合わせ、在庫と価格を一社ずつ確認していました。現在は、SMart-Webを確認すれば、どの医薬品卸からどの条件で購入できるのかを速やかに判断できます。最安値の医薬品卸から供給できない場合でも、次の候補を確認しやすく、供給状況に合わせて柔軟に対応できるのが便利です。
薬局長 藤原 啓一 様
近年は、医薬品の供給が不安定な状態が続いています。価格だけで購入先を決めても、必要なときに納品されなければ医療現場では使えません。その点、複数の候補を比較しながら購入先を検討できることは、救急医療を担う当院にとって非常に有用です。
もう一つ助かっているのが、経過措置医薬品を確認できる機能です。以前は採用予定医薬品が経過措置品目となっていることに気付かず、登録準備を進めている段階で処方が難しいとなった場合もありました。現在は、採用前にSMart-Webで経過措置医薬品かどうかを確認できます。製造中止などを見据えて別の医薬品を選べるため、電子カルテの設定や院内周知をやり直す手間が減りました。
価格交渉や情報整理にかかる時間が減ったことで、私たち薬剤師が調剤など、本来の医療業務に携われる時間が増えました。病院薬剤師の人員確保が難しくなる中、限られた人員で業務を行うには、専門職でなくても代替できる作業や、外部に任せられる業務を見直す必要があります。GPOは、そのための有効な手段の一つになっています。
――導入にあたって、手間がかかったことなどはありましたか?
出石:
導入時には、伝票の扱いや印鑑の押し方など、従来とは異なる事務手続きに慣れる必要がありました。また、麻薬など一部の対象外医薬品は、従来通り個別に交渉する必要があります。そのため、GPOの対象品と対象外品を区別し、院内の運用ルールを決める必要はありました。
ただ、医薬品を発注し、いつもの医薬品卸が納品してくれる基本的な流れは変わりません。最初の手続きを理解すれば、導入そのものに大きな負担はないと思います。
現場の負担を減らすだけでなく、購買の未来を考えるきっかけに
――GPO導入を検討されている方へのアドバイスと総合メディカルに期待していることを教えてください
藤原:
GPOを検討している病院には、価格面だけでなく、日々の業務負担まで含めて効果を考えていただきたいと思います。GPOを利用すれば、価格比較や交渉にかかる時間や労力を大幅に軽減できます。とりわけ薬剤師の人員が限られている病院では、購買業務に費やしていた時間を調剤など本来業務へ振り向けられることが大きなメリットになります。
出石:
GPOの効果は、単純に「何%安くなったか」だけでは測れません。自院の購入価格を客観的に捉えやすくなること、交渉を属人化させずに済むこと、薬剤師が本来業務へ戻れることが重要な効果だと思います。導入を検討する際には、現在どれだけの時間を価格交渉やデータ管理に使っているのか、その業務を軽減することで何ができるようになるのかを整理すると良いと思います。病院全体の業務効率という視点で判断することが大切だと感じています。
馬生:
今後、GPOに参加する病院が増え、共同購買の規模が大きくなることで、スケールメリットにより購入価格がさらに下がることを期待しています。参加する医療機関が増え、全体の交渉力が高まれば、当院だけでなく、すべての参加団体にメリットが生まれます。総合メディカルには、今後もGPOに参加する医療機関を増やし、全体としてより良い購入条件を実現してほしいと期待しています。
また、GPOは、医薬品購買にかかる業務を見直し、限られた人員を医療の質向上に振り向けるための仕組みでもあります。価格交渉の負担や購買管理に課題を感じている病院であれば、まずは現状の購入実績を基にシミュレーションし、価格と業務効率の両面から検討してみる価値があると思います。
医薬品共同購買(GPO)







