課題
- 地域で病院機能を拡大し、グループの医療提供体制をさらに広げる必要があった
- 最成病院の救急受け入れ増加に伴い、近隣に新たな患者受け入れ先が必要だった
- 勝田台病院の承継には、オーナー側を含む複数の関係者との調整が必要だった
解決策
- 総合メディカルが、タムスグループの方針に合う勝田台病院のM&A案件を提案した
- 勝田台病院をグループに迎え、最成病院と一体で患者さんを支える体制を構築した
- 総合メディカルがオーナー側との交渉を担い、承継に向けた関係者調整を支援した
効果
- 勝田台病院が加わり、重点地域におけるタムスグループの病院機能を拡充できた
- 職員応援や救急受け入れがはじまり、最成病院と勝田台病院の連携が具体化した
- 関係者との調整を経て、2026年7月からタムスグループとして運営を開始できた
今回のインタービュイー
タムスグループ
理事長 岡本 和久 様
地域の医療・介護をシームレスにつなぐタムスグループ
理事長 岡本 和久 様ーー外来から入院、在宅、介護まで、切れ目なくつながる医療・ケアへの思いを語る
――「タムスグループ」の概要と特徴を教えてください。
岡本様(以下、岡本):
タムスグループは、1993年に東京都江戸川区で診療所を開院したところからはじまりました。現在は東京・千葉・埼玉に、10の病院をはじめ、20以上のクリニック、特別養護老人ホーム、介護医療院、グループホーム、認知症デイケア、訪問診療・訪問看護、保育園、病児保育室、乳児院などを運営しています。
私たちは「あんしん まごころ」を理念に、人にやさしい真に頼れる医療とリハビリ、介護ケアを実践しています。単に施設や病床を増やすことを目標にはしていません。病院事業でも、「地域のニーズに合った医療サービスを提供する」「入院を断らない」「地域の医療・介護・行政などと密に連携する」といったことを重視しています。地域の中で必要な医療をできるだけ広く担っていく考えです。
私たちがつくりたいのは、一つの地域の中で、外来、在宅、入院、さらに介護までがシームレスにつながって、患者さんが必要なサービスを受けられる体制です。グループが大きくなった今も、そこは変わっていません。「家庭医」「ホームドクター」が開院当初からのキーワードです。
――グループ名の「タムス」の由来は何でしょうか。
岡本:
「タムス(tums)」は「桐和会・ユニバーサル・メディカル・サービス(Towakai Universal Medical Service)」から来ています。総合診療でしたら「ジェネラル」も考えられますが、それでは診療の話だけにとどまります。私たちが目指しているのは、介護など他の分野までシームレスにつながっている普遍的なサービスですから、「ユニバーサル」のほうが適切だと考え、「tums」の綴りになっています。

2026年7月にグループに加わり、地域医療を支える新たな仲間となったタムス勝田台病院
――その考え方は、現在の病院再生にもつながっていますか。
岡本:
そうです。地域医療は、患者さんにとって便利な形にならなければいけないと思っています。地域医療構想もその方向に進む一方、変化に乗り切れない病院も出てきています。
そうした病院を私たちのグループに迎え、一緒に再生していく。それが、タムスグループが考える病院再生です。
私たちが最初に取り組んだ病院再生は、現在のタムス市川リハビリテーション病院でした。
市川市から「公募がはじまる」と声をかけてもらい、私たちが手を挙げて選ばれました。以前は稼働率が4割ほどで、外来診療も市民から決して評判がいいとはいえませんでした。しかし、私たちが病院再生に取り組むことで、外来の評判も良くなり、稼働率も100%にすることができました。これは今、胸を張っていえることです。
もちろん、最初は不安でした。民営化に伴って大きな変化がありましたから、医師をはじめとする働く人々の
問題がどうなるかと思っていました。しかし、「この病院を何とかしていこう」「患者さんのためにやっていこう」という強い気持ちを持ったスタッフの皆さんがしっかりと残ってくれて、「意外と大変ではない」と感じることができたのです。
このとき実感したのが、私にとって病院再生とは「仲間を増やしていくこと」なのだということでした。
M&Aという言葉で表してしまうと、ビジネスライクに聞こえてしまいますが、医療は一般の事業とは違うと考えています。当然、経済合理性は不可欠ですが、「再生」と謳いながら最終的に地域に何も残らない形になってしまえば、地域医療にとって大きな損失です。経済合理性だけでは割り切れない責任と想いこそが、私たちの仕事の本質だと考えています。
「病院再生」が新たな病院のグループインに広がった

最成病院との連携を通じ、地域の患者さんを支えるタムス勝田台病院
――2022年に最成病院をグループに迎えたのは、どのような経緯だったのでしょうか。
岡本:
最成病院は、当時、建物の老朽化が進んでいたことに加え、コロナ禍もあって経営が悪化していました。さらに、建て貸しだった建物の契約が切れて返却することが決まっていたため、病院を続けるには新しい病院を建てなければならない状況でした。
その一方で、最成病院の理事長・院長が70歳を超えていて、これ以上のご負担を新たに背負うことが厳しい状況でした。そこで、次の担い手に引き継ごうということになり、タムスグループに迎えることになりました。M&Aというより、継承に近い感覚でした。
現在、最成病院は新病院への建て替えを進めています。建築費や資材価格が上昇したため、当初の想定よりも費用がかかり、経営だけを考えれば簡単な仕事ではありません。しかし、最成病院には直しながら使い続けるという選択肢はありません。約束ですし、地域医療の拠点として引き受けた病院ですから、しっかり前進させるのがタムスグループの進め方です。

最成病院の救急受け入れ拡大を背景に、新たな受け皿となる病院の必要性を語る岡本理事長
――そこから、勝田台病院のグループインにはどのようにつながったのでしょうか。
岡本:
最成病院を引き受けた時点で、勝田台病院のような受け皿まで構想していたわけではありませんでした。しかし、最成病院の再生を進めると、救急車の受け入れがどんどん増えていきました。
すると、最成病院の病床だけでは患者さんを受け止めきれず、「目詰まり」が起こり始めたのです。そこで、近くに患者さんを受け入れてくれる病院が必要になり、「どこかないかな」と探し始めました。
私たちは全国どこでも病院を増やそうとしているわけではありません。やる地域を決めて、その中で外来、在宅、入院、介護までを一体としてつくっていくことを重視しています。離れたところに拠点をつくっても、いずれ補給線が届かなくなって弱くなってしまいます。
地域の中に必要な機能が揃い、必要な人にきちんとサービスが届く体制が必要でした。結果として、今回グループインした勝田台病院は最成病院から近く、両院を連携させることで、まさに理想の体制をつくることができる病院でした。
長年の信頼関係が、M&A支援をスムーズに進行させた

地域医療を担う病棟のナースステーション。承継後も現場を支えながら、連携体制の充実を進める
――勝田台病院のM&Aで、総合メディカルに支援を依頼した理由を教えてください。
岡本:
勝田台病院のM&Aについては、実は他社からも提案がありました。ただ、総合メディカルとは以前から長いつきあいがありましたので、これまで築いてきた信頼関係を重視してお願いすることにしました。
もう20何年前からのつきあいになると思います。タムスグループがまだ小規模だった頃から、担当者の方が親身に足を運び、私からの相談にも真摯に応えてくれていました。
私たちのグループの歩みや理念を深く理解してくれているパートナーだからこそ、大切な事業を安心して委ねられると確信していたのです。
もちろん、私たちがどの地域で病院を探しているのか、どのような医療体制をつくろうとしているのかをしっかり理解してくれていたことも大きかったですね。
今回の勝田台病院は、最成病院とも連携できる距離にあり、私たちが考えていた地域医療の形にも合っていました。

地域の患者さんを迎える受付。これまでの医療を引き継ぎ、グループの連携を生かした体制づくりを進める
――2026年1月の紹介から7月のグループインまでの期間のサポートをどう感じておられますか。
岡本:
必要なポイントを押さえて、的確にサポートしてもらえたと思います。今回の勝田台病院は、所有と経営が分かれている体制だったこともあり、グループインに向けては関係者との調整が必要でした。
そうした中で、総合メディカルがオーナー側との交渉をうまく進め、全体をまとめてくれたことは非常に助かりました。
M&Aは、条件の合う病院を紹介してもらえば終わりというものではありません。実際に承継するまでには、さまざまな関係者と話をしながら、一つひとつ整理していく必要があります。
総合メディカルには、そうした実務面まで含めてしっかり対応してもらえたので、安心して進めることができました。
個々の病院が連携して、地域医療を支えていく

グループイン後は救急車の受け入れ台数が増加。最成病院と連携し、地域の救急医療を支える
――グループイン後、勝田台病院ではどのような取り組みを進めていますか。
岡本:
最初に皆に話したのは、「最成病院と勝田台病院で二個一だよ」ということです。
二院を合わせると400床弱の病院になります。別々の病院として考えるのではなく、二つの病院が一緒になって地域を支えていくという考え方です。
実際に、最成病院からも多くの職員が応援に行ってくれていますし、勝田台病院でも救急車を受け入れるようになりました。思っていた以上に早く連携が進んでいます。調達についても、グループの仕組みに切り替えることでスピードが上がっています。
私は調達やコスト削減といったシステム面の統合だけがPMI(Post Merger Integration)ではないと思っています。制度や仕組みの共通化はもちろん重要ですが、それ以上に本質的なのは、医師や看護師をはじめとする現場スタッフが、今後の地域医療の変化に合わせて意識を少しずつアップデートしていくことです。
現場のスタッフには「5年後、10年後もこの地域で安心して医療を続けられる体制をつくろう」と呼びかけています。急激な変化には戸惑いも伴いますが、なぜ今変わる必要があるのかを丁寧に対話し、思いを共有していきたいと考えています。

両院の役割分担と連携を深め、治療からリハビリ、在宅生活までを支える体制を目指す
――地域医療の中で、勝田台病院にはどのような役割を担ってほしいと考えていますか。
岡本:
これからは、急性期の拠点病院と高齢者救急を担う病院の役割が、より明確になっていくと考えています。
高齢者救急では、治療するだけではなく、その後のリハビリも重要になりますし、できるだけ早く在宅での生活に戻れるよう支えていくことも必要です。
タムスグループでは以前からリハビリや在宅医療に力を入れてきました。地域医療構想を見ても、これまで取り組んできた方向性は間違っていなかったと感じています。
最成病院と勝田台病院も、それぞれが別々に機能するのではなく、役割を分担しながら連携していく。さらに在宅医療や介護までつなげることで、患者さんの状態に応じて必要な医療やサービスを地域の中で受けられる体制をつくっていきたいですね。
「2040年」を見据えて、地域医療をさらに前進させる

在宅生活への復帰を支えるリハビリテーション。治療の先にある患者さんの暮らしを見据える
――今後、タムスグループが目指す医療の形を教えてください。
岡本:
私が考えている構想でいえば、まだ3分の1くらいしか達成できていません。2040年には、一つの地域の中で外来、在宅、入院、介護までがシームレスにつながる体制を、しっかり固めていきたいと思っています。
ここ数年の動きだけを見ても、医療を取り巻く環境はかなり速いスピードで変化しています。おそらく、これからも同じかそれ以上のスピードで変化していきます。
その変化についていき、地域で医療を継続し、さらに充実させていくことが私たちの仕事だと考えています。
そのためには、医師の働き方も変わっていく必要があります。
最近は先生たちにも、病棟だけではなく、健診や救急の初療、在宅医療なども少しずつ担ってほしいと話しています。もちろん、いきなり何でもやってくださいということではありません。
そのためのリスキリングもタムスグループで支援しています。若い先生たちは20年後も医療の現場にいるわけですから、今のうちから学んで、変化に対応できるようになってほしいです。
台風の目の中にいると、意外と周囲の変化は分からないものです。でも、台風の目がずれて風が吹き始めてから、「まずい」と気づいても遅い。そうなる前に、グループとして次の医療の形をつくっていきたいと思っています。
――これから総合メディカルに期待することはありますか。
岡本:
私は、総合メディカルは「やさしい会社」だと思っています。持っているネットワークも大きいですから、私たちが目指す地域医療に合った案件や提案を、これからも持ってきてもらいたいです。
私たちがやりたいのは、闇雲に規模を大きくすることではありません。必要な地域に必要な機能をつくり、患者さんが外来から入院、在宅、介護までシームレスに医療・介護サービスを受けられるようにする。
そのための仲間を、これからも増やしていきたいと思っています。総合メディカルには、その点でも協力してもらいたいですね。
病院M&A(譲受側)







