事例紹介
専門医から専門医へ 広域の専門医療を守る確かな継承を実現

深堀呼吸器科・内科クリニック
所在地:兵庫県神戸市北区緑町
診療科目:呼吸器科 内科 アレルギー科
課題
- 定年がない開業医である自らの診療レベルが低下する前に継承したい
- 呼吸器内科の専門医が少ないため、継承が困難であった
- 地域の呼吸器診療のレベルを維持したい
- スタッフの雇用を守り、患者さんに迷惑をかけたくない
解決案
- 総合メディカルの広範な医師ネットワークを活用し、専門医を紹介した
- 総合メディカルが、税務面などで適切なアドバイスをした
- 継承に関する手続きや交渉を総合メディカルがサポートした
- 患者さんに迷惑をかけず、スタッフが残れるよう診療方針を引き継いだ
効果
- 専門医への継承が実現し、地域の呼吸器診療の質を維持することができた
- 税務面での適切な対応ができ、スムーズな継承手続きが行われた
- 患者さんへの医療サービスが継続され、スタッフの再雇用が実現した
- 自身の理想とするタイミングで引退することができた
気管支喘息やCOPDの治療に力を入れる地域に根差した呼吸器専門クリニックとして20年

――継承前の「深堀呼吸器科・内科クリニック」について教えてください。
深堀隆 先生(以下、深堀):
深堀呼吸器科・内科クリニックは神戸市北区にある呼吸器科、内科、アレルギー科のクリニックです。神戸電鉄の山の街駅前、4階建て医療ビルの2階にあり、141平方メートルの広さで診療を行っていました。
私は元々、社会保険神戸中央病院(現:JCHO神戸中央病院)で呼吸器内科を担当していましたが、2002年(平成14年)に、ご縁があってこの地で開業しました。開業の目的は地域医療というよりも、専門的な呼吸器診療を行うことでした。この地域には呼吸器内科の専門医が少なく、比較的広域から患者さんが来院されていました。やや“奥地”とも感じられる立地でしたが、電車でのアクセスが良く利便性は良かったと思います。
特徴は、一般的な呼吸器疾患を中心に診療していたことです。診療実績としては、1日の平均患者数が約100名でした。特に力を入れていた気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療の分野では、吸入薬の使用量から推測するに、通院患者数は神戸市立医療センター中央市民病院や神鋼記念病院に匹敵するほどでした。
先ほどもお話したように、神戸市北区は呼吸器内科が非常に少ないところでした。呼吸器のコモンディジーズ※の疾患に関して言うと、私たちのクリニックが最終的な拠り所みたいな立ち位置でしたので、丁寧な呼吸器の診療をして、呼吸器に関してのサービスをきちんと提供することを一番に考えていました。
以前、風邪の後に咳が続くということで来られた患者さんを検査したところ、明らかに喘息の所見が出ていたので、喘息用の吸入薬を出したらすごく良くなられたことがありました。最初、患者さんは自覚がなく戸惑っていましたが感謝されました。風邪の後の咳だからといって咳止めを出すような診療をしていたら、その患者さんは楽にならなかったと思います。しっかりとした呼吸器の診療ができて良かったと思いました。
※コモンディジーズとは、内科医が日常診療でよく遭遇する疾患や有病率の高い疾患のこと。
地域の医療を守るため、良質な診療が実現できている間の継承を構想

――順調に医療を続けてこられて、どうして医業継承しようと思われたのでしょうか?
深堀:
医業継承を考えるようになった背景には、いくつかの理由がありました。
まず、開業医には定年がないため、継承や閉院は自分で決める必要があります。私は開業当初から20年後に辞めると決めていました。専門性の高い呼吸器の医療サービスが提供できなくなるまで診療をしたくないと考えていたからです。自分の診療レベルが低下する前に、優秀な呼吸器内科医に道を譲り、医療をつないでいきたいという思いがありました。
決断した背景には、同じ医療ビルで開業していた整形外科の先輩が50代で急逝され、残された方々が善後策を協議する様子を見て、院長が突然亡くなることの大変さを感じたこともあります。
また、お世話になった循環器内科の先生が60代前半で肺がんのため亡くなられたことも影響しています。その先生は生前にがんの治療を受けながら後継者を探し、医業継承を行っていました。どのような気持ちで仕事をしておられたかを想像すると胸が痛みました。
大袈裟かもしれませんが、継承することで、通院中の多くの患者さんにご迷惑をかけることなく、この地域の呼吸器の診療を守ることができると思っていました。加えて、専門性が高い知識や技能を有するスタッフたちのためにも、きちんと継承することが必要だと感じていました。自分が何かをしたかったから辞めるという意識はなかったですね。
年齢を重ねると、どうしても医療の質を維持することが難しくなります。患者さんの中には自分より若い方も増えてきます。「頑固おやじの店」のようなクリニックにしたくありませんでした。カッコつけたわけではありませんが、しっかりとした診療ができている間に自分の意思で辞めたかったということです。
専門性の高い分野で確実な継承を可能にするための選択

――総合メディカルの「医業継承サービス」を利用したきっかけは何だったのでしょうか?
深堀:
総合メディカルのサービスを利用するきっかけは、長年の信頼関係を築いている方からの紹介です。私の開業を支援してくださった方で、20年の付き合いがありましたので、2020年に継承を考えたとき、まずこの方に相談しました。
しかし、呼吸器内科という専門性の高い分野であったため、適切な後継者を見つけることが難しかったです。履歴書を何人も見せていただいたのですが、残念ながら私たちのクリニックを継承していただけるような背景を持っておられる先生は見つかりませんでした。そこで総合メディカルを紹介してもらいました。
――丁寧な診療や高いサービスを維持したまま継承するには、経験と実力のある先生でないと任せられないとお考えになったのですね。
深堀:
そうです。一般内科とは異なり、呼吸器科の専門医は人数が限られています。
さらに、神戸市北区は住宅街ですが、人口が減少傾向にある地域でもあるので継承に不安がありました。このような背景から、幅広い医師のネットワークがあり、DtoD(Doctor to Doctor)サービスなどに非常に多くの先生が登録されている総合メディカルなら、その中から適切な方を選ばせていただけると考えました。
何よりも重視したのは、良質な呼吸器診療ができる後継者を見つけることでした。私たちクリニックは、理念として「和気あいあいとした職場」「良質な呼吸器診療」「医療はサービス業」の3つを掲げていました。このうち「良質な呼吸器診療」が継承のポイントだと考えていました。患者さん、スタッフのためにコモンディジーズを中心に、高いレベルの医療を提供しつづけることを心がけました。
理想としていた継承がスムーズな進行により実現し、安堵

譲渡先の一丸先生と記念に
――実際に総合メディカルの「医業継承サービス」を利用して継承を実現された感想を教えてください。
深堀:
ホッとしました。的確なサービスを提供してもらってスムーズに継承することができ、感謝しています。依頼から2ヶ月という短期間で、譲渡先となる呼吸器内科専門医の候補が2名も見つかりました。履歴書を見せていただいて、私たちのクリニックを継承していただくには本当に素晴らしい先生だと感じたところから、お話を進めることができました。これは総合メディカルの広範なネットワークがあってこそ実現できたことだと思います。
また、条件交渉は総合メディカルが仲介し、円滑にまとめてくださいました。譲渡時期は、ちょうどコロナ禍の影響で、呼吸器内科ということもあって売り上げが約25%減少していました。これにより、当初の譲渡に関する取り決めを調整する必要が生じましたが、適切に調整してくれました。
税務面でのサポートも助かりました。継承に関する税務処理は非常に複雑で、私も詳しくない部分がありましたが、総合メディカルから複数の営業権評価額の算出方法を教えてもらい、それを参考に税理士と連携して継承に関する適切な税務処理を行うことができました。医者は、お金のことは本当に苦手ですから助かりました。手続き面のサポートも手厚く、行政などへの届け出等はすべて任せることができました。
私からは継承される先生に、どういった診療スタイルをしていたかを書いて渡すことができました。患者さんにとってみると、診療のスタイルが大きく変化してしまうと、不安になる可能性があると考えたためです。また、複雑な臨床経過を持っている患者さんに関してはカルテにショートサマリーを作ってお伝えするようなこともできました。ちゃんとした医療の継続、継承ができたと考えています。
スタッフの再雇用も実現し、患者さんに迷惑をかけることなく診療を継続することができたと思います。一方で、予想外だったのは物理的な片付けの大変さですね。20年分の紙のカルテやレントゲンフィルムの処分には非常に苦労しました。
――継承されてから、現在まで、どのように過ごされていますか?
深堀:
あえて引退と申し上げますが、引退後の生活は、「~しなければいけない」から「~することもできる」「~しないこともできる」という自由な生活へと変わりました。睡眠時間、読書量、歩行数が増え、映画鑑賞や料理など、以前からやりたかったことにじっくり取り組めるようになりましたね。
特に、野球観戦の機会が増えました。私は横浜DeNAベイスターズファンなので、2024年のポストシーズンは孫と一緒にテレビの前で応援を楽しむことができました。
引退から1年間は休みましたが、現在は週2~3回、JA兵庫厚生連の健診医として仕事を再開しています。主に、兵庫県内の住民健診を担当していますが、これは他者との交流によるボケ防止が主な目的です。さまざまな場所へ行くことができるため、見聞が広がりとても楽しく取り組んでいます。
妻からは「仕事を辞めてから表情が明るくなった」「健診も楽しそうに行っているので良かった」と言われます。以前と比べてストレスが大幅に減り、より充実した生活を送れていることを実感しています。
自分で決断できるうちに少しでも早く行動を開始することが大切

――今、医業継承を検討している医師の方々にアドバイスをお願いします。
深堀:
医業継承を検討している医師の方々には、「早く行動を起こすことが大切」とお伝えしたいです。自分で決められる時期に行動を起こすことが必要だと思います。
また、継承を考える際には、地域医療における役割と現在の医療チームを継承することも重要だと感じました。私の場合は、早めに行動したことで呼吸器内科の専門性を持った医師と出会うことができ、医療チームを継承することで地域の呼吸器診療のレベルを維持することができたと考えています。
特に、後継者の人選は極めて重要です。この点で総合メディカルの医業継承サービスは大きな助けになりました。加えて、お金のことだけでなく、手続き上のさまざまな問題の事務的な処理に関しても、専門家に間に入ってもらった方がスムーズに行くことも実感しました。
医業継承(クリニック向け)
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