事例紹介
28年分の地域医療と患者さんへの想いを計画的な継承でしっかり繋ぐ
増田内科医院
所在地:兵庫県高砂市神爪
電話:079-433-1313
診療科目:内科、糖尿病内科、消化器科、呼吸器科
課題
- 年齢や体調面を考慮し、関係者に迷惑をかける前に医業継承したい
- 地域から内科医院がなくならないようにしたい
- 家族継承ができないので、納得できる継承相手を見つけたい
- 医療への思いを共有できるパートナーと、計画的に継承を進めたい
- 患者さんを困らせずに診療を継続し、スタッフの雇用を継続したい
解決策
- 総合メディカルが継承完了までの計画と費用予測を明確にした
- 総合メディカルの医師ネットワークを活用し、適切な継承相手を探した
- 医療への思いを理解した丁寧な継承を総合メディカルが進めた
- 複雑化が予想された手続きを総合メディカルが細かくサポートした
- 患者さんの診療をスムーズに引き継ぎ、スタッフも継続できた
効果
- 全体像とプロセスを明確にし、計画的に安心して医業継承を実現できた
- 理念を共有できる後継者に継承し、自由度の高い生き方を選択できた
- 顧問税理士と連携した手続きにより、交渉ストレスなく手続きが完了した
- 段階的に進めることで患者さんとスタッフの不安を最小限に抑制できた
- 28年間の歴史を引き継ぐ医業継承ができ、医師として安心できた
「患者さんファースト」の姿勢で28年間、地域に寄り添った医療
――継承前の「増田内科医院」について教えてください。
増田章吾 先生(以下、増田):
1996年(平成8年)、39歳の時に生まれ育った兵庫県高砂市の自宅の隣で増田内科医院を開業しました。地域医療の発展に貢献したいという思いが強かったですね。
診療科目は内科、糖尿病内科、消化器科、呼吸器科です。私の専門領域を生かして、毎朝8時から、胃カメラ、腹部エコー検査を行いつつ、在宅訪問診療も継続してきました。
1日100人から120人の多くの患者さんの診療を行い、地域の基幹病院のサテライト的な役割を担う意識を持っていたこともあり、病院と強い信頼関係を築き、良い連携ができていたと感じています。約10年前に電子カルテも導入し、28年間にわたり地域医療を支えてきた思いがあります。
日々の診療で何よりも大切にしていたのは、患者さんとの密なコミュニケーションです。自宅が医院の隣という立地を活かして、夜にデータをチェックして、少しでも気になることがあれば夜間でも患者さんに電話をして状況を伺い、早めの受診を促すなどしていました。これは、開業医だからこそできた患者さんとの関わり方だと思います。電話をすることで患者さんも安心されますし、私自身も「次の診察までどうしようか」と気をもむことがなくなり、精神的に楽でした。お互いにとって、ウィンウィンの良い関係を築けていたのではないかと思っています。
「このままでは迷惑をかけてしまうかも」コロナ禍を経て至った心境
――順調に医療地域の発展に貢献される中、なぜ、医業継承をしようと思いつかれたのでしょうか?
増田:
開業した頃に顧問税理士から「とりあえず、70歳前後で定年を想定しましょうか?」と言われて、漠然と将来のことを考えるようになりました。もちろん当時は若く、「そうですか」と聞き流す程度でした。
具体的に医業継承を意識し始めたのは、開業から約15年が経った55歳の頃です。医師になった娘が結婚したことを機に、自分の医師人生をどう着地させるか考えるようになりました。その頃は、娘への家族継承も思い描いてはいましたが、まだ漠然としたイメージでした。
しかし、その後、地区の医師会の副会長、会長を約10年間務めることになり、自院の診療と医師会活動で多忙を極め、自身の将来を考える余裕はなくなっていました。
大きな転機となったのはコロナ禍です。医師会長としての活動に加え、ワクチン接種、コロナ診療等で、更に多忙な日々を重ねるうちに無理がたたって体調を崩し、救急車で運ばれることになったのです。
幸い大事には至りませんでしたが、この時、「もし自分が急に倒れたら、患者さんやスタッフ、そして家族にどれだけ迷惑がかかるだろうか?」と実感しました。
さらに同時期、大学の同期で非常に親しかった開業医の先生がコロナで急逝したことも、真剣に将来を考えるきっかけになっています。
――そこから、すぐに行動を開始されたのでしょうか?
増田:
まず、医師会長の役職を退任させていただき、すぐさま娘に「医院を継ぐ意思はあるか」と腹を割って話をしました。娘の答えは「医師は続けるが経営はしたくない」と明確でした。彼女の人生ですし、その決断を尊重して、家族継承を考える事はやめました。残るは廃院するか、第三者継承ということになります。
廃院は、施設のことやコストを考えると最後の手段だと思いました。何より、生まれ育ったこの地域で内科医院がなくなることは絶対に避けたい。医師会の会長も務めた立場として、地域医療を継続させる責任があると感じていました。築き上げてきた医療資源や、大切なスタッフの雇用をなくしてしまうのは忍びないと考え、第三者継承にチャレンジしてみようと決意しました。
そこで、まず継承の条件を明確にすることにしました。条件は3つあり、第1に、今いらっしゃっている患者さんが困らないよう、今までと同様にこの地域で内科診療を継続してもらうこと。第2に、医師会に入会し予防接種や学校医、夜間の応急診療センターの勤務など、地域医療への貢献活動に参加していただくこと。第3として、現在の医院の建物や医療資源の有効活用、従業員の継続雇用をお願いすることです。
この3点を継承条件として固め、さらに医業継承までの期限を約5年と設定して、その間に納得できる継承相手が見つからなければ、その時は時間をかけて徐々に廃院の方向に進めようと考えました。これが、私の医業継承のはじまりということになります。
数多くの対話の中から見つけた納得できる医業継承のパートナー
――総合メディカルの「医業継承サービス」を利用したきっかけは何だったのでしょうか?
増田:
具体的に医業継承に向け動き出したのは3〜4年前です。はじめに、以前に医業継承を経験された先輩の先生に相談することにしました。その先生から紹介いただいたコンサルタントの方と話をはじめたのですが、どうにも考え方、進め方が噛み合いませんでした。私の思いや今後の計画をじっくり聞いてほしかったのですが、そういう話の流れにならなかったのでお断りをすることにしたのです。
一旦立ち止まって、ゆっくり考えようと、今度は顧問税理士をはじめ、各方面に相談することにしました。総合メディカルを知ったきっかけは、相談先の一つである医師会の税理士事務所が業務提携していて、紹介されたからです。
総合メディカルと話をして最初に感じたのは、私がこの継承に込める「患者さんや地域への思い」を真摯に受け止め、理解しようとしてくれる姿勢が伝わってきたことです。話の進め方がしっかりしていました。
まず、継承完了までの詳細なスケジュールや費用の予測をきっちりと説明してくれました。これがありがたかったですね。また、増田内科医院は自宅の隣にあり、土地や建物、医療機器などについて、継承の手続きなどが複雑になることが予想できましたが、その点についても「全てご相談に乗ります」と明快に答えてくれたので安心できました。
思いを汲んだ候補者選定プロセスと丁寧な対応でスムーズに進行
――実際に総合メディカルの「医業継承サービス」を利用して継承を実現された感想を教えてください。
増田:
総合メディカルの医業継承サービスを利用して良かった点は、計画がしっかりしていたことです。事前にスケジュールや費用の方向性を明確に示してくれたことで、安心して話を進めることができました。
候補者の方を紹介いただく際も、私の地域医療への思いを真剣に汲んでくださっているのが伝わってきました。自宅の隣ですから、やはり継承後の医院の評判は気になります。総合メディカルは、私の思いを理解した上で候補者を選定してくれていました。最終的に素晴らしい先生とご縁が繋がり、心から納得することができました。
私は契約事が苦手なものですから、その後の契約書の作成段階も丁寧にサポートしてくれて助かりました。顧問税理士の意見にも柔軟に対応してくれたので、スムーズに合意形成ができたと考えています。
経営の重圧から解放され、医療と人生を謳歌するセカンドライフ
――継承されてから、その後、どのように過ごされていますか?
増田:
継承後は、新院長(循環器内科専門医)からのご依頼もあり、最初の5カ月間は毎日午前中に診療しました。私が診ていたインスリン治療や喘息の専門的な患者さんを近隣のクリニックや病院に紹介するなどして、今後の診療へスムーズにつなげるためです。患者さんからすれば、いきなり私が辞めてしまうと動揺されてしまうかもしれません。「まさか70歳前で辞めると思わなかった」という声も実際にありました。
この移行期間で、患者さん一人ひとりに合った近隣の専門医を紹介したり、新しい先生とコミュニケーションを取ったりして、丁寧な引き継ぎができたのは本当に良かったと思っています。新院長の依頼で、現在も週2日午前中の診療をお手伝いしています。
他に、地域の病院で健診や人間ドックを担当したり、ピンチヒッターとして診療に入ったり、嘱託産業医の仕事も続けています。夜間・休日応急診療センターへの出務、介護保険の審査など、現役時代は正直「しんどいな」と思っていた仕事も、できる限り引き受けています。若い先生方の負担を少しでも軽くしてあげたいという気持ちですね。医師会や地域での講演活動もしています。
経営者という立場から解放され、精神的にものすごく楽になりました。書類仕事からも解放され、純粋に診療に集中できる。時間に余裕ができたことで、患者さんの話を以前より、さらにゆっくり聞けるようになったのも嬉しい変化でした。
プライベートも一変しました。月に一度は妻と旅行に行き、週に1回程度はゴルフを楽しんだり、ウオーキング、サイクリングをしたり、これまで縁のなかったサックスのレッスンにも通い始めました。音が好きで、ただ吹いているだけで楽しいのです。何より嬉しいのは、旅行やゴルフの予約を平日に取れることですね。リタイアした地元の中学、高校時代の友人たちと、いつでも気軽に会えるようになりました。妻も、私の表情が明るくなり、健康になったと感じているようです。充実した毎日を過ごしています。
継承は「医師人生の集大成」。何よりも家族と語りあうことが大切
――今、医業継承を検討している医師の方々にアドバイスをお願いします。
増田:
医業継承を検討されている先生方にお伝えしたいのは、まず「なぜ継承するのか」という目的をご自身の中ではっきりさせることが大切だということです。
そして、その思いをご家族、特に継承の可能性があるお子さんとは、しっかり話し合うこと。これは非常に重要です。昔と違い、お子さんが必ずしも継いでくれる時代ではありません。だからこそ、自分の思いを伝え、家族と相談することが大切なのです。そうすることで、進むべき道が見えてくるはずです。
医業継承は数年がかりのプロジェクトです。焦って「この辺で良いや」と妥協すると、後悔することもあるかもしれません。長期的な視点を持って、時間をかけて、納得がいくまで取り組む姿勢が大切です。
そして、継承後のご自身のライフプランを具体的に描いておくことをお勧めします。仕事はどうするのか、プライベートで何をしたいのか。ゴールが見えていると、継承へのモチベーションも変わってくるからです。家族、そして信頼できるパートナーと、計画的に準備を進めることが重要だと思います。
